2019/08/03

SHOE DOG

気に入ったのは・・・・・・これだ・・・・・・他よりわずかに勝っていた。
翼みたいだと1人が言った。
風が吹いてくるみたいだともう1人が言った。
ランナーが走った跡みたいでもある。
私たち全員がこれが斬新で、しかもなぜか古代を彷彿とさせると納得した。つまり時代を超越しているのだ。
何時間もかけて取り組んでくれたキャロラインに、私たちは心から感謝して35ドルの小切手を渡して見送った。
【NIKE CORTEZ '72 S.D.】#091










今度は私が気に入っていないこのロゴに、名前をつけないといけない。その後数日間、私たちは数十個くらいアイディアを出し合い、結局2つの候補が浮上した。ファルコン。
【NIKE CORTEZ '72 S.D.】#092










ディメンション・シックス。私は後者がいいと思った。なにせ思いついたのは私だ。だがウッデルと他のみんなからは酷評された。キャッチーでもなく、何の意味もないと言うのだ。
【NIKE CORTEZ '72 S.D.】#093










私は帰宅してリクライナーに座り、頭の中であれこれ考えた。ファルコン? ベンガル? ディメンション・シックス? 他に何かないか? 他に。

「今朝ジョンソンから電話がかかってきた。昨晩夢の中で新しいネーミングが浮かんだらしい」私は目を丸くした。「夢だって?」「彼はまじめだよ」とウッデル。「いつだってそうさ」「真夜中にハッとしてベッドから起き上がると、目の前に名前が浮かんでいたんだって」 私は身を乗り出して聞いた。「何て名前だ?」「ナイキだ」

 
「はっ?」「ナイキ」「綴りは?」「NIKE」とウッデル。私は黄色いリーガルパッドにそれを書いた。ギリシャの神、勝利の女神の名だ。アクロポリスの丘、パルテノン神殿、アテナ・ニケ神殿。私は旅を振り返った。完結で短い。


「時間がない」と私は言った。「ナイキ、ファルコン、ディメンション・シックス」「ディメンション・シックスはみんな嫌がっている。「僕以外のね」と私。


結局何が決め手になったのかわからない。偶然? 本能? 内なるスピリット?よし。「どれに決めたんだ?」とウッデルはその日の遅くに聞いてきた。「ナイキにした」と私はつぶやいた。「そうなんだ」。「そう、決めたんだ」。「きっとみんな気に入るよ」とウッデル。きっとそうだ。

〜東洋経済新聞社 フィル・ナイト 著 大田黒奉之 訳 「SHOE DOG 靴にすべてを。」より抜粋〜

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